長期平準定期保険を活用した役員退職金準備

長期平準定期保険の解約返戻金は、長い年月を経て徐々に積み上がるという特徴があります。この特徴を活かし、企業経営者の死亡保障+退職金積立の準備として長期平準定期保険に加入されるケースが多くあります。ただし、あくまで掛け捨ての定期保険の一種ですので、返戻率のピークを過ぎると徐々に解約返戻率は下がっていきますので注意が必要です。

ここでは、現在40歳の男性経営者(仮称=Cさん)が退職金の積立を目的として長期平準定期保険に加入したケースをシミュレーションしてみましょう。


Cさんが、ある生命保険会社の長期平準定期保険に加入(死亡保障は4,100万円)した場合、年払保険料は約83万円になります。
70歳までの30年間継続した場合、支払った保険料の合計は約2,490万円になり、保険積立金として資産計上している額(前払保険料)は約1,245万円となります。
(残り約1,245万円は損金計上済み)
そして、その時点でこの長期平準定期保険を解約した場合、解約返戻金は約2,340万円となり、支払った保険料に対する解約返戻率は約94%となります。

(1)解約時(解約返戻金受取時)の仕訳

解約時(解約返戻金受取時)の仕訳は以下の通りです。

解約時点での解約返戻金から保険積立金として資産計上している額(前払保険料)を差し引いた額を雑収入(もしくは雑損失)として計上します。

借方 貸方
現金・預金 23,400,000円 雑 収 入 10,950,000円
前払保険料 12,450,000円

よって、この長期平準定期保険を30年で解約した場合、受け取る現金は2,340万円ですが、雑収入として約1,095万円を利益計上する必要があります。

(2)損金計上できる役員退職金

このCさんの長期平準定期保険の加入目的は、死亡保障と役員退職金の準備を行うことであったため、受け取った解約返戻金は役員退職金の原資に充当されると考えます。
経営者が役員退職金を受け取る際に、会社として損金計上できる金額には上限が設けられています。計算式は以下の通りです。

最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率

例えば、
最終報酬月額は80万円
役員在任年数は30年(29年8ヶ月;70歳時)
功績倍率は2.5倍(一般的に3倍が上限と考えられています)
の場合、800,000円×30年×2.5=60,000,000円

このケースでは、会社として損金計上できる役員退職金の上限は6,000万円となり、この長期平準定期保険を解約して受け取った解約返戻金全額を役員退職金の原資とする場合、2,300万円は全額損金計上が可能となります。

よって、解約返戻金を受け取った際の利益計上(雑収入)は1,095万円ですが、役員退職金として支払われる2,300万円は全額損金計上できますので、この雑収入に対する法人税を支払う必要はなくなります。

(3)個人で受け取る役員退職金の税務

個人で受け取る退職所得の金額は、次のように計算します。

(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額

また、退職所得控除は次のように計算します。

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円×A
(80万円に満たない場合は80万円)
20年超 800万円+70万円×(A-20年)

※A=勤続年数 

Cさんの退職金の支給額が2,300万円、勤続年数が29年8か月であるため、

  1. 勤続年数は30年になります。(1年未満の端数は、1年に切上げ)
  2. 退職所得控除額 800万円+70万円×(アの勤続年数-20年)
       =800万円+70万円×10年=1,500万円
  3. 課税退職所得金額 (退職金の支給額-ロ)×1/2
       =(2,300万円-1,500万円)×1/2
       =400万円
  4. 税額(ウ×税率-控除額)×1.021=(400万円×20%-427,500円)×1.021= 
       380,322.5円 ⇒ 380,322円(1円未満の端数は切り捨てます。)
       この場合の源泉徴収税額は、380,322円になります。

退職所得の源泉徴収税額の速算表

※国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp)より抜粋

[平成25年1月1日現在法令等]

課税退職所得金額(千円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。)から源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は、次の速算表を使用すると簡単に求められます。

退職所得の源泉徴収税額の速算表
課税退職所得金額
(A)
所得税率
(B)
控除額
(C)
税額=((A)×(B)-(C))×102.1%
195万円以下 5% 0円 ((A)×5%)×102.1%
195万円超
330万円以下
10% 97,500円 ((A)×10%-97,500円)×102.1%
330万円超
695万円以下
20% 427,500円 ((A)×20%-427,500円)×102.1%
95万円超
900万円以下
23% 636,000円 ((A)×23%-636,000円)×102.1%
900万円超
1,800万円以下
33% 1,536,000円 ((A)×33%-1,536,000円)×102.1%
1,800万円超 40% 2,796,000円 ((A)×40%-2,796,000円)×102.1%

(注) 例えば「課税退職所得金額」が700万円の場合には、求める税額は次のようになります。
(700万円×0.23-636,000円)×1.021=994,454円

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